もうダメだった。
とんでもないぞ、こいつ。
結衣ってここまでする人だったか?
「そ、そうなんだ…。ありがとう…」
お礼を言うべき場面かわからなかったが、私は引き攣った笑みでとりあえず結衣にお礼を言った。
「…」
ホテルの朝食は最高に美味しいが結衣のとんでもない行動力と財力に驚いてなかなか喉を通らない。
もっと味わって幸せな気持ちで食べたいのに。
「莉子はこの後夜勤明けだからゆっくりこの部屋で休んでね?俺は仕事に行って来るから」
「…仕事?」
「そう。俺、この辺で1ヶ月間モデルの撮影があるの」
「そっか…」
にっこりと未だに私の目の前で笑っている結衣の言葉に私は納得して頷いた。
だから結衣はここに1ヶ月も滞在するのか。
*****
結衣との朝食を終えた後、結衣は早速仕事へ向かった。
私はそんな結衣を見送った後、結衣に言われた通り休むことにした。
夜勤明けはほとんど寝ていないも同然なのでとても眠たい。
できれば早く寝たかった。
「…」
結衣に教えてもらった部屋のクローゼットを開ければそこには結衣が言っていた私の生活必需品が置かれていた。
クローゼットの中には1ヶ月では着られない量の服が大量に保管されている。
そこからパジャマにできそうなものを私は手に取った。
どれもシンプルなデザインだが、どこか可愛らしさもあり、私好みのものばかりだ。
これを一着ずつ結衣が選んでくれたのだろうか。
きっとそうなのだろう。
そうでなければこんなにも一着一着が私の好みに合っているはずがない。
どうしてここまでやってくれるのだろうか。
そう思うと胸の奥が騒ついた。