もうダメだった。
4.これで最後だから
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朝、目覚めると私は後ろから結衣に抱きしめられていた。
6年前と同じように。
忘れていた懐かしい感覚に私はどこか心が温まった。
今日で最後だから私も結衣の腕を振り解くつもりはない。
今日だけ、私も結衣の気持ちを感じたい。
もう一生彼は手に入らない存在になるのだから。
くるりと結衣の方へ体を向ければ気持ちよさそうに眠っている美しい結衣の寝顔が目の前に広がっていた。
やっぱり結衣は何よりも美しい。
眠る結衣はまるでどこかの有名な彫刻のようだ。
美術の教科書に載っていても驚きはしない。
「…ん、莉子」
じっと結衣を見つめていると結衣は少しだけ眠たそうに目を開けて私の名前を呼んだ。
そしてそっと私に口づけをした。
「…っ!」
驚いてしまったが今日は結衣のお願いを聞いてあげる日だ。
結衣のお願いを全部聞けば結衣は私を諦めてくれる。
だから昨日みたいに私は結衣を拒否しなかった。
むしろ私自身も幸せで嬉しくなってしまったが、それは結衣には絶対に秘密だ。
「おはよ、結衣」
私はこの愛おしい気持ちを結衣のおでこに口づけをすることで表現した。
「ふふ、莉子、おはよ」
すると、結衣は嬉しそうに笑って私をぎゅ、と強く抱きしめた。
*****
そこからはまるで6年前と同じような時間を結衣と過ごした。
何をするにも2人で一緒に行い、所々で愛を囁き合って、優しいキスを繰り返した。
まるで愛し合っている恋人のようにゆっくりとした時間を過ごした。
そしてそんな幸せな時間はあっという間に過ぎていき、夜ご飯の時間になってしまった。
この時間が、今日という日が終わってしまえば、私たちの関係は綺麗さっぱり本当に終わる。