もうダメだった。
ご飯を隣で食べている結衣を見て改めて思う。
私はやっぱり結衣が好きなのだと。
6年という長い時間がそれを薄れさせていたが、やはり共に過ごすとその感情が溢れ出てしまう。
きっと明日から辛いのは私の方。
それでもモデルとして芸能界でこれからも輝き続ける結衣に私はきっと耐えられないし、何より結衣の経歴に傷をつけるくらいなら身を引く。
私はそれだけ結衣が好きなのだ。
辛い思いと大好きな思いと最後の幸せの中で私はぐちゃぐちゃになっていた。
「はい、莉子」
そんな私に結衣が優しく笑ってワインを勧める。
「莉子、ワイン好きだったでしょ?特別なものを仕入れてきたからよかったら飲んで?」
私は結衣にそう言われて結衣からワインを受け取った。
「ありがとう」
結衣にお礼言ってグラスに口をつける。
「…」
あれ?
思っていた味とは違い首を傾げる。
味わったことのない味だ。
最後の風味だけがどこか違うような…。
高いワインなんて飲んだことないからこう思ってしまうのかな。
「莉子、美味しい?」
「う、うん。おいし…」
結衣に味を聞かれたので答えようとしたがうまく舌が回らない。
あれ?まだ一口しか飲んでいないのにもう酔いが回った?
ふわふわとした感覚が私を襲い、意識が保てなくなっていく。
抗えない、どうしようもない感覚に襲われている私を見て結衣は怪しく笑った。
「おやすみ、莉子」