もうダメだった。
『特に用はない?だったら…』
「別れよう」
『え?』
早々に電話を切ろうとしていた結衣の言葉を私は静かな声で遮った。
「別れて欲しい」
『待って。何言っているの。急にそんな』
「もう耐えられないの。急じゃない。私はもう限界だから…」
『…俺のこと嫌いになった?』
状況を飲み込めていない結衣にどんどん言葉紡げば結衣はどこか暗い声で私に質問してきた。
嫌いなった?
そんなわけない。
大好きだから別れたいのだ。
「…嫌いじゃない。大好きだよ。だから私のいないところで変わっていく結衣を見ているだけの今の状況が耐えられないの。重たくて結衣の負担になってしまう前に別れたい、それだけだよ」
『…』
ちゃんと今の気持ちを結衣に説明した。
泣き出しそうだったが、それをグッと堪えて何とか自分の今の気持ちを言い切った。
結衣は何故か沈黙していた。
何かを深く考えているのかもしれない。
『結衣ーっ、早く戻って来てよー』
少しだけ遠くの方から結衣が気にしていた人たちであろう声が聞こえて来た。
女の人の甘えるような声。
ズキッと胸が痛んだ。
こんな声聞きたくない。
「お願い。結衣、別れて」
最後まで気丈でいようともう一度しっかりと泣かずに結衣に私はそう告げた。
『わかった。それじゃあ』
結衣のどこか冷たい声と共にプツリと通話が切れる。
私の別れの言葉を結衣は聞こうともしなかった。
涙が溢れた。
先程まで我慢していた分どんどんとそれは溢れて鼻水まで出る始末。
これでよかったんだ。
こうして高校生から続いた私の恋は呆気なく終わった。