もうダメだった。
フロント件コンシェルジュである私たちの仕事の一つにお客様のチェックイン時に玄関でお客様を迎い入れ、案内をする、という業務がある。
誰がどのお客様を担当するかはフロントにあるタブレット内に名簿があるので、それを確認し、業務にあたる。
だから私はいつものようにこれからチェックインされるお客様を確認していた。
そして自分の目を疑った。
18時半、神崎結衣。
そう書かれていたからだ。
「…」
結衣の名前だ。
ドクン、と心臓が跳ねる。
結衣に想いなんてないはずなのに昔のように心臓が騒ついている。
何で、こんな。
「…」
落ち着いて。
大丈夫。これは仕事だよ。
相手が結衣だからって何?
私はこのホテルのコンシェルジュ。
きちんと仕事をしないと。
それに同姓同名の可能性だってあるのだから。
動揺なんてしなくてもいい。
タブレットの時間を確認すると18時15分になっていた。
そろそろ玄関に向かわなければならない。
私は重たい足取りで玄関まで向かった。