もうダメだった。
「周りの方から誤解されるような言動はやめてください」
結衣のまるで彼氏面な行動にお客様はたまたまいなかったものの、他のスタッフはいた為、そのスタッフたちが騒ついている。
綾音なんて大きく目を見開いたまま息をしていないように見える。
…よく見ると白目を剥いているような?
綾音の異常に気づいた他のスタッフたちが慌てて綾音の元に集まり、大慌てで対応されていた。
そんなこともあって徐々に騒ぎは大きなものへと変わっていった。
「なんでそんな悲しいことを言うの?久しぶりに会えれたのに」
冷たい態度の私を見て結衣が少しだけ悲しそうに肩を落とす。
この男はいつもそうなのだ。
猫のような男だと思っていたのに懐けば犬のようでこうやって母性をくすぐるような言動をする。
甘い笑顔で笑う犬のような結衣を知っていたのは私だけだったのに今ではみんなが…って違う!こんなこと考えたいわけじゃない!
とにかく別れる前と同じような態度を取るのもきっと結衣にとっては何の意味もないことなのだと思う。
最初はあまりにも何も変わらないので少し困惑したが落ち着いて考えられれば結衣はそうだったと理解できた。
私にとって結衣は大好きだからこそ苦しくて別れた最悪の元カレだが、結衣にとって私は仲の良かった元カノの1人に過ぎないのだろう。
だからこんなにも普通なのだ。