あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
(ん? 何やら俺を知ってるようだが俺はお前を知らん! キサマ、一体何者だ!?)
目を白黒させて自分と羽理を交互に見比べる若い男を見て、屋久蓑大葉が《《いの一番》》に思ったことはそれだった。
(俺のことを知ってて……なおかつ羽理のことを先輩呼ばわりするってことは……もしや会社の人間か?)
ややして、そう思い至った大葉だったが――。
すぐさま、(まぁ、けど……《《恐らく》》うちの部の人間じゃねぇな)と言う結論に達した。
そもそも自分のすぐひざ元にいた羽理のことすら――こんなに可愛いのに!(←重ね重ねしつこいようだが、あくまでも大葉主観)――眼中に入っていなかった大葉だ。
若い頃、目を惹く外見のせいで酷い目に遭ってきたのもあって、基本自分と関わりのない他者には線引きをして過ごしている大葉は、他部署の人間――しかも平社員などほぼ記憶に残していないに等しい。
だが眼前のチャラ男の、羽理との距離感が気に入らない!と言うことだけはハッキリと分かったから。
「……俺の名前を知っているということは――キミもうちの社の人間か?」
聞きたいことは山ほどあるが、とりあえず当たり障りのないところから、なるべく感情を抑えて問い掛けてみることにした。
(大体俺より背が高いと言うのも気に入らん!)
大葉は、一七六センチの自分よりほんの少し背の高い眼前のチャラ男に、どうしても好い印象が持てそうにない。