あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
***

「ねぇ、たいちゃん。そういえばさ、羽理(うり)ちゃん、いきなりワープしてきたみたいに感じちゃったんだけど……実際はいつどうやって来たの? お姉ちゃんがお風呂にいるのに入浴しておいで?ってたいちゃんが言ったの?」

 弟に脱衣所を追い出されてからずっと、柚子(ゆず)大葉(たいよう)が作りかけていたおかずをつまみ食いしながら考えていた。

(羽理ちゃんの登場の仕方、おかしかったよね?)

 どう考えても扉を開けようとしたら向こうから開いて――。

 なのに脱衣所にいたはずの彼女は、自分同様まるで風呂上がりみたいにびしょ濡れの裸だったのだ。

「……羽理ちゃん、何で脱衣所にいたのにあんなにびしょ濡れだったの? あの子、確かに小柄だけどシンク(ここ)で湯浴み出来るほどちっこくないし……そもそもあんなに濡れそぼったまま脱衣所まで裸で歩いたら、床も濡れるよね?」

 だが、足元の床は何事もなかったみたいにカラリと乾いていた。

 柚子には()せないことだらけなのだ。


***


 いつになく真剣な顔で自分を見詰めてくる姉に、大葉(たいよう)はどう答えたらいいのか考えあぐねて。

「ちょっ、説明長くなりそうだし、先に羽理(うり)に着替え持ってって来るわ」

 裸で待っている羽理を理由に、一旦保留させてもらうことにした。


***


 脱衣所で羽理(うり)に洗い立てのルームウェアを手渡しながら、「頭、ちゃんと乾かして出てこいよ?」と言ったら、何故か不安そうな瞳でこちらを見上げられた。
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