あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
 連絡もせず急に訪問してきた迷惑料代わり。本当は一人でも楽々出来る作業だったが、柚子(ゆず)にも箱の移動を手伝わせたのだが。

 柚子と一緒に積み荷を移動させながらいきなり何をしに来たのかと問うてみれば、旦那と喧嘩して家を飛び出してきたから泊まらせて欲しいだの、丁度そのタイミングで大葉(たいよう)自身の見合いの話を伯父から聞かされたんだけど、どうなってるの?だの……相変わらず柚子は口うるさかった。

 挙げ句、作業で汚れたから風呂へ入らせろだのと騒ぐ始末。

 さすがに身内とはいえ社外の人間に会社のシャワー室を使わせるわけにはいかなかったから、自宅の風呂へ入らせることにして。
 ふと、荒木(あらき)羽理(うり)とのワープ事情が頭に浮かんだ大葉(たいよう)だったけれど、まだ就業時間内だし大丈夫だろうと見定めて、柚子を入浴させることにしたのだ。

 なのに。
 結局何の因果かどんなに時間をずらして入浴しても、羽理と大葉のバスルームは繋がるようになっているらしい。


***


 風呂上がりの羽理(うり)に、寝室からブランケットを一枚取って来て被せてやってから、大葉(たいよう)は電気ポットのお湯と、電子レンジで(ぬく)めた牛乳で溶いたホットココアを出してやる。

(あのままの格好じゃ、色々と想像しちまってヤバすぎるからなっ。――主に俺の息子がっ)
 と心の中で付け加えつつ。

 ブランケットで冷えた身体を温めながら下着の不在を感じさせないようしっかり隠してもらえると大変有難いんだが、と思ってしまった大葉(たいよう)だ。

 それでも――。

「羽理、何でソファ(こっち)に座らねぇんだ?」

 姉の前で羽理の身体に反応してしまうかも知れないと言う最大級の危険を(おか)してでも、好きな女性の傍にはいたいと思ってしまうのだから恋心と言うやつは度し難くて面倒くさい。

 何なら姉を押し退けてでも羽理の隣に座りたい大葉(たいよう)なのに、羽理はソファに腰かけた柚子(ゆず)大葉(たいよう)とはローテーブルを挟む形。まるで大葉(たいよう)からなるべく距離を取りたいみたいにふかふかの座布団の上に小ぢんまりと収まってしまう。

 そのことに異議を申し立てた大葉(たいよう)だったのだけれど。
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