あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
***


 いきなり大葉(たいよう)から不整脈だと思っていた胸の痛みは病気などではなく、恋のときめきなのだと明かされた羽理(うり)は、どう反応したらいいのか分からなくて固まってしまう。

「自覚しろって言われても……私、私……」

 本当に目の前の大葉(たいよう)のことが好きなのかどうかすら分からないのだ。

(腹立たしいくらいハンサムなのは認めてますし、そんな見た目の割に話しやすくてギャップ萌えなトコも嫌いじゃないですっ!)

 それに――。

 作ってくれる料理も絶品で、大葉(たいよう)から手料理を食べさせてもらえると思うだけでヨダレがジュワリと湧いてきて胸が躍ってしまう。

 でも――。

 それを恋心だと断じるのは、何か違う気がした羽理だ。


「なぁ羽理。俺は正直(ぶっちゃけ)お前が倍相(ばいしょう)五代(ごだい)と一緒にいるのを見るだけでも、すっげぇムカつくんだよ。胸の辺りがモヤモヤして自分でも感情のコントロールが付けられなくて参っちまう」

 眉根を寄せて、大葉(たいよう)が己の心情を吐露するのを見て、言われてみれば、自分が二人と話している時の彼は、確かにおかしかったな?と思い出した羽理だ。

 それこそ、やけに不機嫌になってさしたる用もないのに部長室へ呼び付けてきたり、会話の途中なのに話を(さえぎ)って羽理を連れ去ろうとしてきたり。

(モヤモヤさせてしまっていたのだとしたら、確かに申し訳ないことをしました)

 一応にそう反省してみた羽理だったのだけれど――。

「わ、私っ、二人とは何にもない……です、よ?」

 思わず語尾がしどろもどろ。言い訳するみたいにそう言ったら、「それでも、だ」と溜め息混じりに大葉(たいよう)がつぶやいて、羽理を抱く腕にグッと力を込め直してくる。

「あ、あの……」

 ギュッとされるのはやっぱりとってもソワソワして恥ずかしくて……心臓がバクバクして苦しくてたまらないからやめて欲しいのだと羽理は涙目で大葉(たいよう)を見上げたのだけれど。

「俺はお前を好きになるまで、自分がこんなに嫉妬深いとは思わなかった……」

 切ないぐらいに真っすぐな瞳で見つめられてそんなことを言われた羽理は、胸がキュッと苦しくなって言葉に詰まってしまう。

「わ、私なんかのために嫉妬だなんて……ホントですか……?」

「お前だからこそ、だ。なぁ、羽理。俺の好きになった女を〝私なんか〟とか卑下(ひげ)するなよ」
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