あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
 ここまで自分のことを崇拝(すうはい)?してくれる大葉(たいよう)に、今日のお昼は倍相(ばいしょう)課長と公園でお弁当ランチをしちゃいました……だなんて言ったら、どうなってしまうんだろう?

(内緒にしておいた方がいい、よ、ね?)

 そんなことを思ってから、別に大葉(たいよう)がどう思おうと今までの羽理(うり)ならそんなに気にならなかったはずなのに、何故今回はそんな風に考えてしまいましたかね!?と思い至って思考が停止する。

「あ、あの……私……」

「ん?」

 ――お昼に倍相(ばいしょう)課長と二人でお弁当を食べました。

 分からない感情に支配されるくらいなら、いっそのことさらりと白状してしまえばいいと思うのに、羽理はやっぱりそれが出来なくて。

「好きとか嫌いとか……嫉妬するとかしないとか……よく分かりません……。ごめんなさい……」

 気が付けば、全然違うことを口走ってしまっていた。

 心にやましいことがあるからだろうか。

 自然と視線がブレて、羽理はとうとう(こら)えきれなくなって、うつむいてしまう。
 
「ホントに……分からないのか?」

 なのにまるでそれを許さないと言いたいみたいに、大葉(たいよう)にそっとあごに手を添えられて上向かされた羽理は、ソワソワと視線をそらせる。

「なぁ、羽理。例えば、なんだがな。――俺がお前を()っぽって羽理以外の女と親しげにしてたとしたらどうだ? 平気か?」

 あごを掴まれたままそんなことを問われた羽理は「へ、平気に決まってますっ」と答えたのだけれど。

「だったら何で……俺が柚子(他の女)と一緒にいたことを責めて、あんなに泣いたんだ?」

「そ、それは……た、大葉(たいよう)がっ。私のことを好きだって言ってたくせに……後で呼び出すって言う約束まで破って別の女性(ひと)を優先させたと思ったからです! あの時はまだ、会社の受付で貴方と一緒にいた綺麗な女の人が……大葉(たいよう)のお姉さんだって知らなかった、から……」

「ん? お前、あん時ロビーにいたのか……?」

 勢い込んでそこまで言ったら、大葉(たいよう)が「だったら声掛けてくれりゃ、よかったのに……」と付け足して、嬉し気に顔をほころばせてふっと笑うから。

 羽理はその時のどうしようもなく苦しかった気持ちを思い出して、何だか腹立たしくなってきてしまう。

「し、仕事だって手に就かなくて早退までして……泣きながらお風呂に入ったのに……! 笑うとか酷い!」

「……ああ、俺と一緒で重症だな」

「え?」

「分からないのか? 羽理。それが〝ヤキモチを妬く〟ってことだ」
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