あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
 大葉(たいよう)の言葉に羽理(うり)はビクッと身体を震わせて……挙動不審に彷徨(さまよ)わせていた目線を恐る恐る大葉(たいよう)に合わせて……。
「やき、もち?」
 確認するみたいにそう問いかけた。

「ああ、そうだ。――羽理はしんどかったかも知れねぇけど……すまん。俺はお前が()いてくれてるって知って、ちょっと……いや、かなり嬉しかった」

「……え?」

「お前が俺のことを意識してくれてるんだなって分かって……。俺だけの一方通行じゃないって思えたの、すっげぇ幸せなことだったんだよ。羽理がクソ真面目に心臓が痛い、死ぬかもって悩んでんのも恋愛初心者な感じがして可愛くて……。けど一応俺なりにそれは恋(わずら)いだぞって伝えたつもりだったんだがな? 結局、何か伝わってなくね?って分かってからも……お前が俺のことでいちいち戸惑う姿が可愛すぎて……つい訂正が遅れちまった。……すまん」

「ひょっとして大葉(たいよう)が最初に言ってた、お医者様でも草津の湯でもっていうの……」

「恋の(やまい)には治療法はねぇって良く言うだろ?」

 大葉(たいよう)がほんの少し腕を緩めてくれて……間近で愛し気に羽理のことを見下ろしてくるから。

 羽理はそんな大葉(たいよう)の顔を見上げて、胸がキュンと引き絞られるように痛むのを感じた。

「この、切ないくらいに痛いのが……恋の……?」

 胸元の服をギュッと掴んで言ったら、「ああ、そうだ」と肯定されて。

 羽理は、コレが俗に言う恋のときめきなのだと自覚した途端、頬がブワッと熱くなるのを感じた。
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