あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
(何だかティーンズラブの世界みたいだもの!)

 恋愛に(うと)羽理(うり)が、自分には縁遠いからこそ興味を惹かれまくってしまう恋愛モノにありそうな、一風変わった設定みたいで。
 上手くいけば〝夏乃トマト〟の執筆活動のネタになりそうだよ!?とか思ってしまった。

 本当はそんな理由で軽々しく結論を出すべき事柄ではないことは、百も承知だ。

 でも――。

 それでも初っ端からお互いに真っ裸で「初めまして」をした大葉(たいよう)と自分なら、それもありかな?と思えてしまったから不思議だ。


「――はい、喜んでっ!」

 勢いよくそう答えたら、大葉(たいよう)から即座に「居酒屋か!」と突っ込まれてしまった。

 でも、羽理を抱きしめる大葉(たいよう)の表情はとても幸せそうで。

 羽理は、大葉(たいよう)の嬉しそうな顔を見た途端、大学時代に付き合っていた初カレから告白された時には感じたことのなかった、キュンキュンするような胸の高鳴りを覚えた。

 今まではずっと……。キューッと胸が締め付けられるたび、死んでしまうんじゃないかと恐ろしくて(たま)らなかったはずの〝不整脈〟が、どこか甘く心地良いものに感じられたのは、初めてかも知れない――。


***


 本当は「《《恋人》》になってくれますか?」と言おうと思っていたのに、気が付いたら羽理(うり)を自分にもっと縛り付けたいみたいに〝結婚〟という契約(しがらみ)を持ち出してしまっていた大葉(たいよう)だ。

 もしかしたら、伯父から見合い話を持ち掛けられていることが心の片隅にあったことも関与していたのかも知れない。

 ――俺には結婚を約束した恋人がいるので見合いはお受け出来ません。

 大葉(たいよう)は、腕の中の羽理を見下ろしながら、彼女を思い浮かべた上で毅然(きぜん)とした態度で伯父にそう言えたら最高だなと思ったのだ。
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