あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
(わ、私だけだらしないのは何か悔しいだけだもんっ)
単なる対抗心だと自分に言い聞かせた羽理だったけれど、実際はそれだけが理由じゃないことくらい、さっきからいちいち色々言い訳しまくっている自分が、一番よく分かっている。
「あった。これこれ……」
クローゼット奥から取り出した真新しいルームウェアの上下一式セット。
今回はしっかりチェックして、タグも忘れずにちゃんと切り離した。
取り出したばかりで、畳まれていた時の折り目もしっかりついたままの部屋着を着て、姿見の前でくるりと回ってみて、「よしっ」とつぶやいた羽理は、『あ、そう言えば……』とベッドへ放り投げたままにしていた携帯のことを思い出した。
「あ……大葉が言ってた通りだ。充電切れてる」
羽理は触れても反応しない真っ黒なままのスマートフォンの画面を見て、いそいそと充電器にさしたのだけれど。
やっと起動出来たスマートフォンは、開通したと同時にショートメッセージを数件受信して――。
開いてみれば、大葉からの着信を知らせるメッセージの他に、仁子からのものと、倍相課長からのものが混ざっていた。
何だろう? とりあえず折り返さなきゃ……と思ってベッドにちょこんと正座したと同時。
ピンポーンとチャイムが鳴って、羽理は大葉が帰って来たんだ、と思って。
(もぉ、合鍵持ってるんだから勝手に入って来ればいいのに……)
いつもなら確認するドアモニターもインターフォンも確かめずに「はいはーい」と言いながら無防備にドアを開けてしまった。
だがドアの外に立っていたのは、大葉じゃなくて――。
「えっ。倍相課長?」
だった。
***
昼、一緒にランチをしたときにはいつも通りだったはずの荒木羽理の様子がおかしくなったのは、受付ロビーで屋久蓑大葉が彼自身の《《姉》》と会話をしているのを見かけてからだ。
倍相岳斗は、明らかに動揺しているように見える羽理に、「やけに親密な感じがしたけど……もしかして《《彼女》》さんとか?……だったのかなぁ?」と、ふたりが血縁だと知っていてわざとそんな風に意地悪く鎌を掛けてみたのだけれど。
単なる対抗心だと自分に言い聞かせた羽理だったけれど、実際はそれだけが理由じゃないことくらい、さっきからいちいち色々言い訳しまくっている自分が、一番よく分かっている。
「あった。これこれ……」
クローゼット奥から取り出した真新しいルームウェアの上下一式セット。
今回はしっかりチェックして、タグも忘れずにちゃんと切り離した。
取り出したばかりで、畳まれていた時の折り目もしっかりついたままの部屋着を着て、姿見の前でくるりと回ってみて、「よしっ」とつぶやいた羽理は、『あ、そう言えば……』とベッドへ放り投げたままにしていた携帯のことを思い出した。
「あ……大葉が言ってた通りだ。充電切れてる」
羽理は触れても反応しない真っ黒なままのスマートフォンの画面を見て、いそいそと充電器にさしたのだけれど。
やっと起動出来たスマートフォンは、開通したと同時にショートメッセージを数件受信して――。
開いてみれば、大葉からの着信を知らせるメッセージの他に、仁子からのものと、倍相課長からのものが混ざっていた。
何だろう? とりあえず折り返さなきゃ……と思ってベッドにちょこんと正座したと同時。
ピンポーンとチャイムが鳴って、羽理は大葉が帰って来たんだ、と思って。
(もぉ、合鍵持ってるんだから勝手に入って来ればいいのに……)
いつもなら確認するドアモニターもインターフォンも確かめずに「はいはーい」と言いながら無防備にドアを開けてしまった。
だがドアの外に立っていたのは、大葉じゃなくて――。
「えっ。倍相課長?」
だった。
***
昼、一緒にランチをしたときにはいつも通りだったはずの荒木羽理の様子がおかしくなったのは、受付ロビーで屋久蓑大葉が彼自身の《《姉》》と会話をしているのを見かけてからだ。
倍相岳斗は、明らかに動揺しているように見える羽理に、「やけに親密な感じがしたけど……もしかして《《彼女》》さんとか?……だったのかなぁ?」と、ふたりが血縁だと知っていてわざとそんな風に意地悪く鎌を掛けてみたのだけれど。