あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
***
「……荒木さん、体調はどう?」
倍相岳斗に、心配そうに眉根を寄せて小首を傾げられた羽理は、突然の上司の訪問に強張らせていた身体の力をほんの少しだけ抜いた。
「あの……課長どうして私の家を?」
「あー、ごめんね。急に来たりしたら気持ち悪いよね。――えっと……前に迎えに行くって話した時があるでしょう? あの時に法忍さんから荒木さんの家、聞いてたんだ」
照れ臭そうに……どこか申し訳なさそうに言われた羽理は、なるほど、と思って。
「……一応来る前に連絡はしたんだけど……。ひょっとして荒木さん、携帯の電源切ってない?」
眉根を寄せた岳斗から、「何度掛けてもずっとオフモードなアナウンスが流れるから……倒れたりしているんじゃないかと心配になって来ちゃった」と続けられた羽理は「わー、申し訳ないのですっ」と、岳斗のうるん……とした子犬のような雰囲気にほだされて、思わず謝っていた。
このところちょっぴりイメージからかけ離れた一面を見せられて何となく戸惑っていた羽理だけれど、いま見せられているアレコレの表情は羽理のよく知る倍相岳斗のほわほわとした《《人畜無害》》の微笑みだったから。
「あ、あの……ご心配をおかけしました。実は携帯の電池切れに気付かなくて……さっき充電器に掛けたばかりなんです。体調の方は……ご覧の通り、お陰様ですっかり良くなりました」
「そっか。良かったぁー。――って、……ホント突然押し掛けるみたいになっちゃってごめんね」
「いえいえ、全然……」
「あ、そうだ。忘れるところだった。――はい、これお見舞い」
言いながら、岳斗が差し出してきたのは飲み屋街の一画にあって、開店時間が十七時から……と言うちょっぴり変わったケーキ屋さん『アフターファイブ』の箱で。
振り子時計に「5」のローマ数字を現す「V」が描かれた特徴的なロゴに、羽理は、「わぁっ、ここのケーキ、仕事後に行っても売り切れ商品が少ないからお気に入りでよく行くんですっ」と相好を崩した。
「……荒木さん、体調はどう?」
倍相岳斗に、心配そうに眉根を寄せて小首を傾げられた羽理は、突然の上司の訪問に強張らせていた身体の力をほんの少しだけ抜いた。
「あの……課長どうして私の家を?」
「あー、ごめんね。急に来たりしたら気持ち悪いよね。――えっと……前に迎えに行くって話した時があるでしょう? あの時に法忍さんから荒木さんの家、聞いてたんだ」
照れ臭そうに……どこか申し訳なさそうに言われた羽理は、なるほど、と思って。
「……一応来る前に連絡はしたんだけど……。ひょっとして荒木さん、携帯の電源切ってない?」
眉根を寄せた岳斗から、「何度掛けてもずっとオフモードなアナウンスが流れるから……倒れたりしているんじゃないかと心配になって来ちゃった」と続けられた羽理は「わー、申し訳ないのですっ」と、岳斗のうるん……とした子犬のような雰囲気にほだされて、思わず謝っていた。
このところちょっぴりイメージからかけ離れた一面を見せられて何となく戸惑っていた羽理だけれど、いま見せられているアレコレの表情は羽理のよく知る倍相岳斗のほわほわとした《《人畜無害》》の微笑みだったから。
「あ、あの……ご心配をおかけしました。実は携帯の電池切れに気付かなくて……さっき充電器に掛けたばかりなんです。体調の方は……ご覧の通り、お陰様ですっかり良くなりました」
「そっか。良かったぁー。――って、……ホント突然押し掛けるみたいになっちゃってごめんね」
「いえいえ、全然……」
「あ、そうだ。忘れるところだった。――はい、これお見舞い」
言いながら、岳斗が差し出してきたのは飲み屋街の一画にあって、開店時間が十七時から……と言うちょっぴり変わったケーキ屋さん『アフターファイブ』の箱で。
振り子時計に「5」のローマ数字を現す「V」が描かれた特徴的なロゴに、羽理は、「わぁっ、ここのケーキ、仕事後に行っても売り切れ商品が少ないからお気に入りでよく行くんですっ」と相好を崩した。