あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
「あ。――け、ケーキ! 倍相課長からケーキを頂いたのでお出ししますねっ」
自宅のはずなのに、まるで会社にいるみたいな……何とも落ち着かない空気に居た堪れなくなった羽理は、先程岳斗からもらったばかりのケーキのことを思い出してポンッと手を叩いて立ち上がった。
「あ、でもあれは……」
慌てたように背後から岳斗が声を掛けてきたけれど、逃げるように立ち去った羽理は、猫みたいな素早さでキッチンへ置き去りにしたままだったケーキの箱と、皿を三つ手にして戻ってきた後で。
それを見た岳斗が口を開くより先。
ふと羽理の手元を見た大葉が「羽理。フォークがねぇーと食えんだろ」と言っていた。
「あっ」
その指摘に、羽理が口に手を当てて『しまった!』と言う顔をして立ち上がろうとするのをポンポンと頭を撫でて制すると、大葉が「ヤカン。火に掛けてくるついでに俺が取って来てやるから。お前は座って倍相課長とケーキ選んどけ」と立ち上がって。
そんな二人を交互に見つめた岳斗が、「まるで夫婦ですね」とつぶやいた。
「ふ、夫婦っ」
途端ブワッと赤くなってしまった羽理と、何も言わず得意げな顔をした大葉を見て、岳斗は小さく吐息を落とさずにはいられなかった。
***
「――実はね、箱の中のケーキ、二つしかないんですよ」
「ふぇっ!?」
キッチンへ立ち去った大葉に聞こえないよう、さっきから伝えたかったことを小声で告げた岳斗に、羽理が可愛らしくも間の抜けた声を出した。
それがおかしくて思わず笑ってしまった岳斗だ。
自宅のはずなのに、まるで会社にいるみたいな……何とも落ち着かない空気に居た堪れなくなった羽理は、先程岳斗からもらったばかりのケーキのことを思い出してポンッと手を叩いて立ち上がった。
「あ、でもあれは……」
慌てたように背後から岳斗が声を掛けてきたけれど、逃げるように立ち去った羽理は、猫みたいな素早さでキッチンへ置き去りにしたままだったケーキの箱と、皿を三つ手にして戻ってきた後で。
それを見た岳斗が口を開くより先。
ふと羽理の手元を見た大葉が「羽理。フォークがねぇーと食えんだろ」と言っていた。
「あっ」
その指摘に、羽理が口に手を当てて『しまった!』と言う顔をして立ち上がろうとするのをポンポンと頭を撫でて制すると、大葉が「ヤカン。火に掛けてくるついでに俺が取って来てやるから。お前は座って倍相課長とケーキ選んどけ」と立ち上がって。
そんな二人を交互に見つめた岳斗が、「まるで夫婦ですね」とつぶやいた。
「ふ、夫婦っ」
途端ブワッと赤くなってしまった羽理と、何も言わず得意げな顔をした大葉を見て、岳斗は小さく吐息を落とさずにはいられなかった。
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「――実はね、箱の中のケーキ、二つしかないんですよ」
「ふぇっ!?」
キッチンへ立ち去った大葉に聞こえないよう、さっきから伝えたかったことを小声で告げた岳斗に、羽理が可愛らしくも間の抜けた声を出した。
それがおかしくて思わず笑ってしまった岳斗だ。