あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
 何だかよく分からないが、今までいけ好かない人間でしかなかったはずの屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)に、敬愛の情がわいてきてしまって。

 気が付けば、つい無意識に〝大葉(たいよう)さん〟と親しみを込めて呼んでしまっていた。

(ああ、この感情、何て言うんだろう……)

 羽理(うり)と話している大葉(たいよう)をぼんやりと見つめて――。

(あんなに気を遣われて。……羽理ちゃん、《《ズルイ》》なぁ)

 無意識にそう思ってから、岳斗はハッとする。

(いや、いや、いや! ちょっと待って?)

 いつの間にか岳斗の中で、屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)はただの上司ではなく、〝人として(?)かなり好き〟な対象に設定されてしまったっぽい。

 大葉(たいよう)の性的対象は絶対に異性で、自分だってそのはずなのに。

(ズルイ、はどう考えたっておかしいでしょう!)

 今の考えは、バグとしか思えない。

(そうだ。この感情は……憧れに違いない!)

 きっと、自分もあんな男になれたらな?と言う思いが上手く処理しきれなくて、恋愛感情に誤認されかけているだけに違いない。

(ちょっと気持ちの整理が必要だな。……家に帰って一旦頭を冷やそう)

 岳斗は小さく吐息を落とすと、そう結論づけた。
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