あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
「考えてみりゃあ俺より先にお前のコレ、倍相(ばいしょう)に見られちまってるわけだろ? 何かすげぇモヤモヤすんだけど」

 言われてみれば何となく。羽理(うり)もそれは嫌だな?と思ってしまった。

大葉(たいよう)、今度別の可愛いの買ったら……その時こそは」

「ああ。俺に一番をくれ」


***


「よしっ。じゃあ、今夜は俺、お前のベッド(わき)で寝るから……。寝ぼけて踏んづけてくんなよ?」

 ククッと笑ってベッド下の床を指さしたら、羽理(うり)が「ふ、布団もないのにそんなところで寝かせられませんっ!」と眉根を寄せる。

 考えてみれば、羽理の部屋で二人一緒に夜を明かすのは初めてなのだ。

 当初の計画では羽理を上手に丸め込んで、一緒のベッドで添い寝なんか出来たら最高だ!……と目論(もくろ)んでいた大葉(たいよう)なのだけれど、いざ!と思ったら意気地(いくじ)なしのヘタレ虫がそろりと頭をもたげた。

 この部屋の片隅に置かれたベッドも、大葉(たいよう)のダブルベッドとは違って小さなシングルサイズだし、そこに羽理とくっついて寝たりして、何もせずにいられるだなんて、思えなかった。

(い、一応避妊具はあるけどな!?)

 そうなることを全く期待していないわけではない。
 その辺の準備《《だけ》》は万端(ばんたん)なのだが。

(羽理、そう言うの経験ねぇって言ってたし……今日気持ちを確かめ合ったばっかでそんなんは……さすがにダメだろ)

 別室に移動しても距離が足りないぐらい、羽理に触れたくて(たま)らない欲が抑え切れる自信がないと言うのが本音だが、残念ながら部屋数が足りない。

 女性用ワンルームをうたっているらしいこの物件。
 キッチンや風呂場があるあちら側と、リビングのあるこちら側以外には部屋がないのだ。

 玄関から真っ直線に部屋の中(リビング)が見渡せては良くないと言う配慮からだろう。
 キッチンスペースとリビングとの間に取って付けたみたいなすりガラスの仕切り戸はあるのだけれど。

 戸があるからと、キッチンの床に寝そべると言うのはいくら何でもおかしいし、すぐそこに見える、リビングに併設(へいせつ)されたウォークインクローゼットの中に入って寝るのも妙な話だ。
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