あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
(俺は『ドラレもん』じゃねぇしな)

 未来からきた、レモン色の超有名な国民的アニメの猫型ロボットが、世話になっている主人公の家の押し入れで寝起きしている。

 それをふと思い出してしまった大葉(たいよう)だ。
 
(あ、けど……猫って部分は羽理(うり)、喜ぶかも知んねぇな)

 そこまで考えて、論点はそこじゃなかったなと、大葉(たいよう)は頭を切り替えた。

 はぁ、と溜め息混じり。意図して携帯の画面に視線を落とせば、まだ十九時(しちじ)にはなっていなくて。

 急げば、ホームセンターの閉店時間に間に合うだろうか。

(ひとっ走り行って、布団を一式買ってくるか?)

 そう思いはしたものの、それだと羽理をまた一人にしてしまうと気が付いた。

(置いてってる間にまた来客があったら嫌だしなぁ)

 実際、そんなことは滅多にないのだが、大葉(たいよう)岳斗(がくと)の訪問で変に気が張ってしまっている。

 かといって……連れて行くにしてもこんな太ももむき出しの可愛いルームウェアを着た羽理を、これ以上誰にも見せたくない。

 もちろん、着替えさせている時間はさすがにないから、大葉(たいよう)は無限ループに(おちい)って「うー」とうなった。

 懸命に寝床をどうすべきか思い悩んでいる様子の羽理を横目に、嫉妬心丸出しでそんなくだらないことを思ってしまっている自分はある意味バカだなと思ってしまった大葉(たいよう)だ。


***


 で、結局――。

「ほっ、ホントに良いのかっ!?」

「なっ、何度も聞かないで下さいっ。決心が鈍りますっ!」

 羽理(うり)からベッドで一緒に寝ましょうと提案された大葉(たいよう)は、そんなやり取りを繰り返した後、羽理が落っこちたりしないよう壁側を彼女に譲って、自分は逆に今にも落ちそうなくらいベッドの端っこに寝かせて《《頂いて》》いる。

 せめてもの温情というか……自分への(いまし)めで羽理に背中を向けているのだけれど――。

「あ、あの……落ちたら大変です。もっ、もうちょっとだけこっちに来ませんか?」

 羽理に服のすそをキュッと引っ張られて、大葉(たいよう)の〝タイヨウ〟は結構ピンチなのだ。
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