あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
大葉(たいよう)の大きな舌で、ベロとか口の中コショコショされるの……何かくすぐったくてムズムズした……)

 触れられたのは口なのに、下腹部がキュンと(うず)くような何とも言えない不思議な感覚で、気が付けば羽理(うり)は足をもじもじと擦り合わせていた。

 心臓バクバクジェットコースターも、キュンと甘く締め付けられるような下腹部の反応も、大葉(たいよう)と経験したんだと思ったら、何だか嬉しくて照れ臭い。

 婚外子という自身の生い立ちから、婚前交渉なんて一生出来ないだろうなと思っていた羽理の心を、大葉(たいよう)は丁寧に解きほぐしてくれた。
 避妊だって羽理が言わなくてもちゃんとしてくれたし、そもそも大葉(たいよう)は羽理と結婚したいと言ってくれたのだ。よもや子供が出来たとしてもきっと受け入れてくれるだろう。

 〝恋人(フィアンセ)との初エッチ。〟

 そんなパワーワードが脳内を駆け巡った結果――。
(私っ! ホントに大葉(たいよう)と、最後までしちゃったんだぁ~!)
 なんてことを激しく実感してしまって。

(夏乃トマト! 作品の描写に深みが増しそうですっ!)

 そう宣言して、布団を頭から被って心の中でキャーキャー悲鳴を上げながら(もだ)えていたら、盛大にゴン!と壁に頭を打ち付けてしまった。

「はぅっ!」

 予期せぬ痛みに、今度こそしっかり声を出してしまった羽理だったのだけれど。

「どうしたっ!?」

 当然と言うべきか。
 大葉(たいよう)がフライ返しを手にしたまま寝室へ飛び込んできた。


***


 チキンライスの上に乗っけるフワとろ卵を焼いていたら、隣室からゴン!という音が響いてきた。

 それと同時、「はぅ!」とうめき声が聞こえて来て、大葉(たいよう)は慌てて火を止めて仕切り戸を開けたのだけれど。

 見れば、ベッドの上に布団をかぶったお化け――ではなく羽理(うり)がいて――。「どうしたっ!?」と声を掛けながらも心の中、『何をやってるんだ、こいつは! くっそ《《可愛い》》じゃねぇか!』と、他者からすればちょっぴりズレたことを思わずにはいられない。
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