あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
「スープカップとかあると見栄えもいいし、お勧めなんだがな?」

 口が緩んだのを隠すようにわざと苦言を呈すれば、「スープはいつもクナール社のカップスープをお湯で溶いたものを愛飲しているのでマグで十分なんですよぅ」と、羽理(うり)が曖昧に笑うから。大葉(たいよう)は「さては買う気ねぇだろ」と図星を突いてやった。

「ぐっ。……そ、そう言えばうち、ミキサーないのにどうやってポタージュなんて作ったんですか?」
 カエルがつぶれたような声でうなった後、誤魔化すみたいに話題を変えてきた羽理に、「あく抜きしたサツマイモを電子レンジで柔らかくしてな。鍋に移してからお玉の背でつぶしたんだ」と答えたら、今度こそ申し訳なさそうに眉根を寄せられてしまう。

「すみません。うち、マッシャーもなかったですね」

「問題ない」

 実際、柔らかく火の通ったサツマイモを潰すのなんて、造作ないことだったから。

 大葉(たいよう)がクスッと笑って羽理を見詰めたら、羽理がソワソワと瞳を揺らせてから「い、いただきます……」とつぶやいてスープに口を付けた。

 さっき味見をしたから知っているが、羽理が飲んでいるスープは確かにミキサーで作ったものより少し舌触りがざらざらしている。
 けれど、逆にそれがアクセントになっていて美味しく感じられるはずだ。

 現に羽理はカップから口を離すなり、「はぁー、すっごく美味しいですっ。大葉(たいよう)はホントいいお嫁さんになれそうですねっ」と、とろけたように微笑んだ。

 まるで思ったままを口にしたという(てい)の羽理に、「俺はお前を嫁にもらう予定なんだがな?」と低めた声で返したら、羽理の頬がブワッと(あか)くなった。

(ちょっ、可愛すぎだろ、《《俺の》》嫁候補!)

 何故か大葉(たいよう)までそんな羽理の反応にあてられて、やたらと照れてしまった。
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