あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
22.もしかしてこのせい?
 突如仕事を休むことになってしまった羽理(うり)は、ちょっと動いただけでもしんどいし、家にいても色々と大変そうだとソワソワしていた。

「羽理、今日は一人で過ごすのしんどいだろ? 柚子(ゆず)が日中俺ん()にいてくれるそうだから、あとで移動するぞ?」

 でも、いざそんな風に大葉(たいよう)から提案されてしまうと「へ?」と間の抜けた声を出さずにはいられなかった。

「ゆ、柚子お姉さまに一体どんな説明をなさったんですかっ!?」

 まさかバカ正直に『抱きつぶしました』だなんて説明はしていないだろうけれど、昨夜柚子には元気な姿を見られている。

 一晩明けて、いきなり羽理がヨボヨボのお婆ちゃんみたいになっていたら、『あらあらあら♥』みたいに邪推されるかも知れないではないか。

(いや、邪推じゃないか……)

 十中八九ビンゴだけれど、『初めてのエッチで貴女の弟さんに足腰立たなくされました』だなんて言えるほど、羽理だって厚顔無恥(こうがんむち)ではない。

「とりあえず昨夜帰り際に夜道で階段から落ちて、足腰痛めたって言っといた」

「か、階段から……!? うわー、何て嘘つきさんなの!」

「……正直に伝えた方が良かったか?」

「そ、それはっ! 滅相もございません! 嘘、大歓迎です! 嘘つきバンザイ!」

 下手に諸手(もろて)を挙げようものなら、激痛は必至。羽理は口先だけで懸命に大葉(たいよう)を褒め称えた。

「――けどなぁ」

 そのせいで、柚子から『病院には連れて行ったんでしょうね?』と聞かれ、しどろもどろになったところへ『まだなの!? じゃあ私が連れて行くから車、置いて行きなさい』と言われたらしい。

「ふぇっ!?」

 大葉(たいよう)の言葉に、羽理はゾワワワッと血の気が引くのを感じた。

「お医者様を騙せるわけないじゃないですかぁ! 階段落ちのダメージじゃないの、すぐバレちゃいます!」

 ばかりか、『ほどほどに、ね?』とか苦笑され兼ねない。
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