あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
さすがに本気で病院へ連れて行くつもりはないだろうから、単なる時間潰しに他ならないだろう。
「ほんの一時間ほどな」
元々クソ真面目な大葉は、有給休暇を全くと言っていいほど使っていないのだとか。
だから、昨日に続いて気が引けたのだが、恐る恐る社長に打診したら、二つ返事でOKが出たらしい。
それを聞いた羽理は、すぐさま思ったのだ。
「大葉、社長と直接お話出来たりするんですね。やっぱり腐っても部長様なんだ!って今更のように実感しました!」
「……勝手に腐らせるなよ」
羽理は、土恵商事に勤め始めて二年ちょっとになるけれど、社長と一対一でマトモに会話したことなんて皆無なのだ。
せいぜい社内ですれ違った際に、挨拶する程度。
「だってホントに意外だったんですもん!」
変な所に感心してしまって、大葉から「お前、俺の評価が低すぎないか?」と睨まれてしまった。
***
「えっと……大葉のお家に持って行くものって、お財布と携帯くらいで大丈夫ですかね?」
「充電器と着替えも何着か持っとけ。もちろん下着や寝間着もだぞ?」
言ったら、「えっ?」と言われて。
「そんな調子で、一人で飯とか風呂の支度とか出来るのか?」
柔らかな羽理の頬を両手のひらで挟み込んで、顔を上向かせて問い掛けたら、「……多分……無理、です……ね」と、羽理が不服げに大葉を見上げてくる。