あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
***
「社長から言われたんだが……キミが俺と社長の関係を知ったのって……」
「貴方が財務経理課長に昇進した頃です」
今から倍相岳斗に話す内容を考えると、彼が本当に自分の味方かどうかを見極めるのは必須事項に思えて。
鎌をかける形で聞き出すことも考えた大葉だったが、先ほど倍相の方から自分と社長が縁戚にあることを《《随分前から》》知っていると聞かされたことを思い出して、真っ向勝負でいこうと気持ちを切り替えた。
案の定、大葉が話し始めたのに被せるように倍相の方からあっさり打ち明けてくれて……逆に反応が遅れてしまう。
「……それって」
「たまたま入った喫茶店で、社長と大葉さんのお姉さま方が〝たいちゃん〟とやらの昇進を祝う話をなさっているのを聞いてしまったことがあるんです」
最初は〝たいちゃん〟と屋久蓑大葉が同一人物だとは気付かずに聞いていたのだと、倍相が吐息を落とした。
だが話を聞くうちにピンと来たのだと言う。
「僕は……ちょっと前まで仕事が出来て部下からの信頼も厚いあなたのことが大嫌いでした。だから……」
「あることないこと噂を流した?」
「はい」
社長である恵介伯父からは何となくそんな気がすると聞かされていた大葉だったけれど、実際に目の前で倍相本人から「そうだ」と認められると結構《《くる》》ものがあるなと思ってしまった。
***
倍相岳斗が新入社員として土恵商事に入ってきた時のことを、大葉はよく覚えている。
恵介伯父から『うちにはもったいないくらい優秀な子が入ってくる』と聞かされていたからだ。
持っている資格や、入社試験の成績などを鑑みても、倍相岳斗という人間は大企業を希望してもすんなり入社出来てしまえるだろう逸材だったらしい。
「社長から言われたんだが……キミが俺と社長の関係を知ったのって……」
「貴方が財務経理課長に昇進した頃です」
今から倍相岳斗に話す内容を考えると、彼が本当に自分の味方かどうかを見極めるのは必須事項に思えて。
鎌をかける形で聞き出すことも考えた大葉だったが、先ほど倍相の方から自分と社長が縁戚にあることを《《随分前から》》知っていると聞かされたことを思い出して、真っ向勝負でいこうと気持ちを切り替えた。
案の定、大葉が話し始めたのに被せるように倍相の方からあっさり打ち明けてくれて……逆に反応が遅れてしまう。
「……それって」
「たまたま入った喫茶店で、社長と大葉さんのお姉さま方が〝たいちゃん〟とやらの昇進を祝う話をなさっているのを聞いてしまったことがあるんです」
最初は〝たいちゃん〟と屋久蓑大葉が同一人物だとは気付かずに聞いていたのだと、倍相が吐息を落とした。
だが話を聞くうちにピンと来たのだと言う。
「僕は……ちょっと前まで仕事が出来て部下からの信頼も厚いあなたのことが大嫌いでした。だから……」
「あることないこと噂を流した?」
「はい」
社長である恵介伯父からは何となくそんな気がすると聞かされていた大葉だったけれど、実際に目の前で倍相本人から「そうだ」と認められると結構《《くる》》ものがあるなと思ってしまった。
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倍相岳斗が新入社員として土恵商事に入ってきた時のことを、大葉はよく覚えている。
恵介伯父から『うちにはもったいないくらい優秀な子が入ってくる』と聞かされていたからだ。
持っている資格や、入社試験の成績などを鑑みても、倍相岳斗という人間は大企業を希望してもすんなり入社出来てしまえるだろう逸材だったらしい。