あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
面接の際、為人に難があるのかと身構えていた上層部も、やんわりとした物腰の、非の打ちどころがない青年の登場に、逆に頭をひねったらしい。
当時ただの係長に過ぎなかった大葉は面接官側にはいなかったのだが、プライベート――甥っ子として土井恵介と会ったとき、恵介伯父からそんな話を聞かされた。
『その子ね、たいちゃんの下に付けようと思ってるんだ』
そんな優秀な新人を自分なんかが見ていいのだろうか?と懸念したら、『たいちゃんだから任せられるんだよ』と、社長の顔で太鼓判を捺されて、大葉は身の引き締まる思いがしたのだ。
***
「俺は……お前にそんなに酷いことをしていたか?」
もしかしたら気負い過ぎて知らず知らずのうちに倍相岳斗を追い込んでいたのかも知れない。
当時は大葉も今より随分若かったし、青臭かったはずだ。
ふと眉根を寄せて問い掛けたら、倍相は「まさか」とつぶやいた。
「逆に……とてもよくしていただきましたし、いい上司に恵まれたと嬉しく思っていました」
記憶の中の倍相岳斗は、むしろあの頃は自分を頼れる上司として慕ってくれていたように思う。
それが大葉の思い違いでなければ、どこかで倍相が自分を憎むようになったきっかけがあったはずだ。
「だったら何で……」
「……大葉さんが……社長の身内だと知ったから……です」
そこまで話した倍相は、何かを決意したように小さく吐息を落とすと「少し長くなるかもしれないんですが……聞いて頂けますか? 僕の生い立ち……」と大葉の顔を真剣に見つめてきた。
そんな倍相に、大葉は「ああ」とうなずくことしか出来なかった。
当時ただの係長に過ぎなかった大葉は面接官側にはいなかったのだが、プライベート――甥っ子として土井恵介と会ったとき、恵介伯父からそんな話を聞かされた。
『その子ね、たいちゃんの下に付けようと思ってるんだ』
そんな優秀な新人を自分なんかが見ていいのだろうか?と懸念したら、『たいちゃんだから任せられるんだよ』と、社長の顔で太鼓判を捺されて、大葉は身の引き締まる思いがしたのだ。
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「俺は……お前にそんなに酷いことをしていたか?」
もしかしたら気負い過ぎて知らず知らずのうちに倍相岳斗を追い込んでいたのかも知れない。
当時は大葉も今より随分若かったし、青臭かったはずだ。
ふと眉根を寄せて問い掛けたら、倍相は「まさか」とつぶやいた。
「逆に……とてもよくしていただきましたし、いい上司に恵まれたと嬉しく思っていました」
記憶の中の倍相岳斗は、むしろあの頃は自分を頼れる上司として慕ってくれていたように思う。
それが大葉の思い違いでなければ、どこかで倍相が自分を憎むようになったきっかけがあったはずだ。
「だったら何で……」
「……大葉さんが……社長の身内だと知ったから……です」
そこまで話した倍相は、何かを決意したように小さく吐息を落とすと「少し長くなるかもしれないんですが……聞いて頂けますか? 僕の生い立ち……」と大葉の顔を真剣に見つめてきた。
そんな倍相に、大葉は「ああ」とうなずくことしか出来なかった。