あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
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 一通り壮絶な生い立ちを話した後、服をまくり上げてみせた倍相(ばいしょう)岳斗(がくと)の腹には、大小さまざまな(あざ)がついていて――。

 それを見せられた大葉(たいよう)は言葉を失った。

「義母は煙草を吸いません。なのでこの辺りのは……お香とか、そういうのを押し当てられて付けられた火傷痕です。小さい頃は布団叩きの柄で力任せに背中やお尻を叩かれたり……過失を装って熱い飲み物を掛けられたり……そういうのもしょっちゅうでした。――僕の身体が彼女より大きくなってからは抵抗されるのが怖くなったんでしょうね。身体に対する暴行はなくなりましたが、言葉での暴力はずっと続きました」

 義母・花京院(かきょういん)麻由(まゆ)が、岳斗に当てがわれた勉強部屋へ単身〝可愛い息子の様子見〟と称してお茶請けのお菓子を持ってくる時は、いつも虐待とセットだったらしい。

 岳斗の部屋は、息子が勉強しやすいようにと花京院(かきょういん)岳史(たかふみ)の指示で防音仕様になっていたから、少々の音は外へ漏れ聞こえないというのも義母には都合が良かったんだろう。
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