あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
***


「で、最初の話に戻るんだがな」

「……大葉(たいよう)さんが荒木(あらき)さんとのことをしばらくは社内で伏せることにした理由……ですか?」

「ああ……」

 大葉(たいよう)岳斗(がくと)に、社長の土井(どい)恵介(けいすけ)が、ゆくゆくは自分のことを『土恵(つちけい)商事』の社長に据えたいと考えている旨を明かした。

 もちろん内々のことだから、大葉(たいよう)だって第三者にポンポンと打ち明けるべき話ではないということは心得ている。
 だが、それを分かった上で……敢えて岳斗にはちゃんと話しておこうと決意したのだ。
 さっき、大葉(たいよう)が岳斗のことを信じると言った言葉に嘘はない。


「岳斗、お前は俺と社長が血縁関係にあることを知っている。だから話したんだ」

 そう前置きをして、大葉(たいよう)は小さく吐息を落とす。

「社長は……俺がそう言う立場にあることで、羽理(うり)が他の社員らから(ねた)みの対象になるんじゃないかと懸念(けねん)しているみたいでな、羽理とのことを公表するのは待つようにって言われた」

「でも……大葉(たいよう)さん、それじゃあ二人の気持ちは……」

「俺たちの気持ちはもちろん大事だ。けど……かつての自分のようになってもいいのか?って聞かれちまったら……さすがにちょっと考えるだろ?」

 恵介伯父の言葉を思い出した大葉(たいよう)が思わず自嘲気味に吐息を落としたのを見て、その原因を作っていた岳斗は罪悪感に駆られたらしい。
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