あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
***
次女の柚子――ではなく長女の七味から電話がかかってきたのは、結局大葉が悶々としながらも定時まで真面目に仕事をこなしたあとだった。
『もしもし、たいちゃん?』
すぐ上の姉――柚子よりも気持ち低めで落ち着いた声。喋り方も声に合わせたように〝ザ・長子〟と言う感じで少し貫禄がある。
「七味……」
いつもならば柚子からの電話よりも七味からの着信の方が安心して応答出来るのだが、今回ばかりはちょっぴり落胆してしまった。
『《《気持ちは分かるけど》》あからさまにガッカリしない』
咎めるように吐息を落とされて、心の中を見透かされた気がした大葉は、グッと言葉に詰まる。この感じ。どうやら七味がこのタイミングで自分に電話してきたのはたまたまではないらしい。
「柚子から何か聞いたのか?」
恐る恐る問い掛けてみれば、『まぁね』という返事。
「じゃあ羽理のことっ、何か言ってなかったかっ!?」
七味の言葉に思わず身を乗り出すようにして問い掛ければ、再度小さく吐息を落とされた。
『まぁそう焦らないで聞きなさい、大葉』
日頃は〝たいちゃん〟と呼ぶくせに、大葉に何か言い聞かせたいことがある時には愛称ではなく、ちゃんと名前で呼ぶところがある七味である。姉のそんなところを熟知している大葉は、逸る気持ちを懸命に堪えて七味の言葉を待った。
『今日は柚子、貴方の恋人――婚約者って言った方がいいかしら? その子を連れて実家へ行ったらしいのね』
大葉の車を借りたいと言ったのは、どうやら実家への移動のためだったらしい。ひとまず、羽理に何かがあってのことではないと知って、大葉は現状も忘れてホッと胸を撫で下ろした。
次女の柚子――ではなく長女の七味から電話がかかってきたのは、結局大葉が悶々としながらも定時まで真面目に仕事をこなしたあとだった。
『もしもし、たいちゃん?』
すぐ上の姉――柚子よりも気持ち低めで落ち着いた声。喋り方も声に合わせたように〝ザ・長子〟と言う感じで少し貫禄がある。
「七味……」
いつもならば柚子からの電話よりも七味からの着信の方が安心して応答出来るのだが、今回ばかりはちょっぴり落胆してしまった。
『《《気持ちは分かるけど》》あからさまにガッカリしない』
咎めるように吐息を落とされて、心の中を見透かされた気がした大葉は、グッと言葉に詰まる。この感じ。どうやら七味がこのタイミングで自分に電話してきたのはたまたまではないらしい。
「柚子から何か聞いたのか?」
恐る恐る問い掛けてみれば、『まぁね』という返事。
「じゃあ羽理のことっ、何か言ってなかったかっ!?」
七味の言葉に思わず身を乗り出すようにして問い掛ければ、再度小さく吐息を落とされた。
『まぁそう焦らないで聞きなさい、大葉』
日頃は〝たいちゃん〟と呼ぶくせに、大葉に何か言い聞かせたいことがある時には愛称ではなく、ちゃんと名前で呼ぶところがある七味である。姉のそんなところを熟知している大葉は、逸る気持ちを懸命に堪えて七味の言葉を待った。
『今日は柚子、貴方の恋人――婚約者って言った方がいいかしら? その子を連れて実家へ行ったらしいのね』
大葉の車を借りたいと言ったのは、どうやら実家への移動のためだったらしい。ひとまず、羽理に何かがあってのことではないと知って、大葉は現状も忘れてホッと胸を撫で下ろした。