あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
 でも考えてみれば羽理(うり)屋久蓑(やくみの)部長の恥ずかしい秘密を色々知っている。

 ちらりと怖いお顔から視線を逸らして下半身に視線を送ると同時、俄然いつもの調子を取り戻した羽理だ。

「残業なんてするわけないじゃないですかっ。きっちり定時には上がりますよぉ! 私、その日の仕事は全力で時間内にやり遂げる主義ですので!」

「じゃあ何してたらそんなに遅くなるんだ? 夜更かしは美容の大敵だぞ?」

(ちょっと部長、貴方、お母さんか何かですかっ)

 やけに突っ込んで聞いてくる屋久蓑(やくみの)に、羽理は内心タジタジ。
 これ以上詳しく話してしまったら、色々障りが生じてしまいそう!

 だって、帰宅してご飯を食べたりしたあとに、執筆タイムを設けているからですよ!なんて言えるはずがないではないか。

 今、目の前の部長様を主役に()えた、『魔法使いはビッグマグナム(仮タイトル)』のプロット作りにワクワクソワソワしているだなんて、絶対にバレるわけにはいかないのだ。

 かといって、小説投稿サイト〝皆星(みなほし)〟で絶賛連載中の『あ〜ん、課長っ♥ こんなところでそんなっ♥』の話をするのもマズイ。

(あれは倍相(ばいしょう)課長への妄想小説だからっ)

 作中の課長様のお名前が〝柴井(しばい) (しょう)〟とか結構安直で……下手したら〝バイショウ〟が名前の中に取り込まれていることに気付かれてしまうかも知れない。

 『ビッグマグナム(仮)』の方では屋久蓑(やくみの)部長がモデルだとバレないような名付けを心掛けよう!と思ってしまった羽理だ。
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