あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
5.俺はただ、風呂に入る時間がかち合うのが嫌なだけ
 荒木(あらき)羽理(うり)が、屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)と部長室でもめた(?)日の夕方――。

 羽理(うり)倍相(ばいしょう)岳斗(がくと)に誘われて、法忍(ほうにん)仁子(じんこ)とともに会社から徒歩数分圏内の居酒屋へ来ていた。

「二人とも急に誘ってごめんね?」

 乾杯の後、(ねぎら)うみたいに倍相(ばいしょう)課長にそんな言葉を投げ掛けられた羽理は、「いえっ。嬉しかったので全然っ」と言いながら、最初は自分だけが誘われたのに、何故か強引についてきた仁子にチラチラと視線を流す。

「この子が課長と二人っきりだと緊張するって言うからっ。何か私まで強引に付いてきちゃって……ホントすみません」

 羽理の視線を(かわ)すように言い訳をした仁子に、倍相(ばいしょう)課長が「いやいや、僕も気が利かなくてごめんね。何か今日の荒木さんと屋久蓑(やくみの)部長のやり取りが妙に気になっちゃってつい。……けど、そりゃそうだよねぇ。上司と二人っきりとか緊張しちゃうよねー」と鼻の頭を掻いて。

(ああんっ、倍相(ばいしょう)課長のそういう仕草っ! ホント可愛くてたまりません!)
 と、ビールジョッキ(中)で顔を隠した羽理を(もだ)えさせた。

「ホントは二人っきりにしてあげるのが良いっていうのは私も分かってたんですよぉ? 何せ羽理は、経理課へ配属された時から倍相(ばいしょう)課長のファンですからぁっ」

 そうこうしているうちに、仁子がとんでもない暴露をしてくれて、羽理は危うく手にしたばかりの《《二杯目の》》中ジョッキを取り落としそうになった。
< 43 / 353 >

この作品をシェア

pagetop