あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
「はぁーい♥ 楽しく飲んれますよぉ~? 悪いれしゅかぁ?」

「えー。誰と、ってぇ? ……ふふふっ。内緒れすぅ~」

 とか。

 まるで気心の知れた友人か、ラブラブな恋人との会話のように展開する羽理(うり)の声と、電話から時折漏れ聞こえてくるイケメンボイスに仁子(じんこ)は一人、(裸男って誰!?)と疑問を深めていた。

 羽理の電話が終わるのを見計らった仁子は、「ちょっとぉ、羽理、裸男って誰なのよぅ?」と、酒の勢いを借りて問うてみたのだけれど。

 羽理はニマニマして「いちゅも(はらか)でいる男の人のことらよー? チラッとしか見たことないけろぉ~、めっちゃご立派しゃんなのぉー♥」と、こちらも酔った勢いのままとんでもない説明をする。
 もしこの場に屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)がいたならばきっと、「誤解を招くような発言をするな、痴女!」とこれまた話をややこしくしていただろう。

「いつも裸って……。何それ、何それ! 羽理ぃー、アンタいつの間に彼氏(かれり)出来(れき)たのよぅ!?」

 だが、酔っぱらい仁子は諸々(もろもろ)肝心なところを突っ込まずにそこへ集約して。
 目の前でそんな二人のやり取りを無言で見詰める倍相(ばいしょう)岳斗(がくと)が、仁子の質問にピクッと反応したのだが、二人とも気付かなかった。

彼氏(かれり)なわけないじゃぁーん。ただ(はらか)でいたらけらもん」

「何それー。どういうシチュエーション!」

「分かんなぁーい」

 キャハハッと羽理が笑って、「そうか、そうかぁ。分かんないなら仕方(しから)ないかぁ~」と仁子がつられて笑う。
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