あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
(いや、……近場で下ろせば問題ないか?)

 だがすぐそんなことを思ってしまう程度には、どうも荒木(あらき)羽理(うり)のことが気になって仕方がない大葉(たいよう)だ。

(裸を見ちまったからか?)

 やけに庇護欲(ひごよく)を搔き立てられてしまうのは。

 会社で見た羽理は、プライベートで目にした無防備な羽理よりはるかにしっかりして見えたのだけれど。

 酔っ払った羽理は、見た目こそ出来る会社員といった綺麗な格好のままだったのに、中身は先日有り得ない状況で対面した時のぶっ飛んだ羽理そのもので。

 倍相(ばいしょう)岳斗(がくと)も彼女のあんな姿を見たんだと思うと妙に落ち着かない気持ちになった。

(酔った荒木。アホみたいに可愛くて……危なっかし過ぎるだろ)

 〝アホみたい〟ではなくアホそのものなのだが、羽理に対してお花畑な大葉(たいよう)はそのことには気付けないまま、一人危機感を募らせる。
 大葉(たいよう)の勘だが、倍相(ばいしょう)は羽理のことを憎からず思っている気がするからだ。

(そんな男の前で無防備に酔い潰れてんじゃねぇよ)

 普通気になる男の前ではもっと配慮をするものではないのだろうか。

 およそ大葉(たいよう)の中にある〝常識的な女性〟の言動には有り得ない動きをする羽理に、翻弄(ほんろう)されまくりの大葉(たいよう)だ。

 アルコールで潤んだ羽理の瞳と、上気した頬。

 あれは本当に色っぽくてやばかったと無意識に思ってしまってから、大葉(たいよう)は(これはきっと、酔っ払い女の酒気に当てられたに違いない)と思って。

 そう考えてみれば、今ハンドルを握っている車内にもそこはかとなく羽理の(まと)っていた甘い芳香と酒のにおいが残っているようで、大葉(たいよう)は「マジか……」とつぶやいて、反応しかけている股間を意識した。
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