あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
 ちなみに寝ぼけた羽理(うり)に踏まれては可哀想なので、キュウリは今夜だけリビングに置いてあるケージで眠ってもらっている。
 幸いキュウリはとても聞き分けのいい子なので、大葉(たいよう)の切ない視線につぶらな瞳で『分かりまちた!』と言わんばかりに応えると、大人しくケージ内のベッドで丸くなってくれた。

 だから、いま寝室には本当に羽理と大葉(たいよう)の二人きりだ――。

(襲われるかも?とか微塵(みじん)も思わねぇのはどういうわけだよ、荒木(あらき)……)

「俺だって男だぞ?」

 聞こえるか聞こえないかの小声でつぶやいてみたけれど、羽理はふにゃりと笑うと「やーん。しょんな大きいの、食べ切れましぇんよぅ……」とか何やら平和な夢を見ているらしい。

「バカ女……」

 悔しくなった大葉(たいよう)は、幸せそうに笑う羽理の鼻をギュッとつまんでやったのだけれど。

「ふぎゃっ。……(はにゃ)(あにゃ)に豆がっ」

 なんて言葉とともに、羽理がギュッと大葉(たいよう)の手を掴んで――。

「ジャックと豆にょ木……」

 とかなんとか寝言を言いながら、大葉(たいよう)の腕を、まるで豆のツルに見立てたみたいにグイグイ引っ張ってきたからたまらない。

「わ、ちょっと待て……っ」

 そんなことをされるだなんて思っていなかった大葉(たいよう)は、バランスを崩して羽理のすぐそばに倒れ込んでしまった。

 さすがにコレはまずいだろ!となって、慌てて起き上がろうとしたのだけれど。
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