あのっ、とりあえず服着ませんか！？〜私と部長のはずかしいヒミツ〜

９．ワンコパニック

　倍相(ばいしょう)岳斗(がくと)との電話の後、持参していた服に着替えて太ももを隠してしまった羽理(うり)に、大葉(たいよう)の方はまだ部屋着姿のまま朝食を振る舞った。

　メニューは炊き立ての飯(めし)、豆腐となめこの味噌汁、甘めに味付けしたプレーンの玉子焼き、鮭の塩焼き、冷凍していた作り置きのきんぴらゴボウと言った、いわゆる〝ザ・日本の朝食〟。

「旅館の朝食みたいです！　こういうこと出来る人、ホント尊敬しちゃいますっ！」

　羽理はそう言って、嬉し気に全部綺麗に平らげてくれた。

　食後のデザートにと桃の缶詰を細かく刻んだヨーグルトを出したら「わぁっ、デザートまで！　部長はいつでもお嫁さんに行けますねっ♪　私、家事全般ホント苦手なので尊敬します！」と照れたように「えへへ」と微笑まれて。

　思わず「いや、俺は嫁に行くつもりはないし、何なら家事全般が苦手な嫁を貰ってサポートしたいくらいなんだが……」とアピールしてみた大葉(たいよう)だったのだが、「へぇ、そうなんですねー」と華麗にスルーされてしまった。

（今の流れで『もしかして部長、私のことを……』ってならないのは何でだ！）
　とか思った大葉(たいよう)だったけれど、結局言えず仕舞いだった。


＊＊＊


　化粧品はメイク直し用に鞄へ常備してあった化粧ポーチの中身であらかた何とかなりそうだが、基礎化粧品がない！と騒ぎ始めた羽理(うり)のために、スーツへ着替えた大葉(たいよう)は、マスクで顔を覆い隠した羽理(うり)を連れて近所のコンビニに車を走らせた。

　コンビニには急なお泊りに備えてだろう。
　スキンケアセットが結構何種類も完備されていて驚いた大葉(たいよう)だ。