あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
(まぁ、下ろしてる方が取っ付きやすい印象で、私は好きですけどね)

 面と向かって言ってあげたなら大葉(たいよう)が飛び上がって喜びそうなことを思いつつ、お澄まし顔で大葉(たいよう)から四歩ばかり後方を歩いている羽理(うり)だったのだけれど。

 曲がり角に差し掛かるなり「はぐれるなよ⁉︎」と後ろを振り返って声を掛けてきた大葉(たいよう)に、「そんなことしたら離れて歩いている意味ないじゃないですかー!」と大声で叫んで、通勤途中の会社員の皆さんや、通学途中の学生さんたちに【何事ですかね⁉︎】と注目されてしまう。

 その様にクルリと向きを変えて歩き始めた大葉(たいよう)からすぐさま電話が掛かって来て。
 何の用ですか?と思いながら出てみたら『お前こそ目立ち過ぎだろ!』と機械越しに文句を言われてしまった。


 そんなこんなで、結局連れ立って歩いた方が目立たなかったんじゃないの?と思ってしまった羽理だった。


***


 朝のアレコレを思い出してほぅ、っと切なく吐息を落とした荒木(あらき)羽理(うり)は、すぐ隣に座っている法忍(ほうにん)仁子(じんこ)から、興味津々に反応されてしまう。

「なに、なに〜? 朝から色っぽい溜め息なんて()いてぇ〜。さては例の裸男と何かあったなぁー?」

 ニマニマしながら小声で問いかけられた羽理は、内心心臓バクバクで「まさかっ」と大慌てで手を振った。
< 86 / 370 >

この作品をシェア

pagetop