生意気な後輩はどうやら私のことが好きらしい
やっぱり、漫画はあとで読もう。
結局、やることのなくなった私は1階へと降りることにした。
その時、
「……まじで無理」
隣から聞こえてきた声。
……これって、九条渚の声だよね?
ベッドから立ち上がったばかりだが、一旦静かに腰を下ろす。
「はぁー」
今度は盛大なため息。
え、もしかしてこの部屋の壁って薄いの?
今までは物置状態だったから気づかなかった。
どうやら、今日このうちへ来た九条渚もそのことを知らないようだ。
「穂波先輩と同じ家で生活するとか気狂いそう」
じゃなきゃ本人が聞いてるのに言わないでしょ、こんなこと。普通。
いや、九条渚ならそんなこと気にしない……かも?
本当ならこの場で『それはこっちの台詞だよ!』と言ってやりたい。
でも、そうするとこちらの声も聞こえてしまうわけで……。
どうせならこのまま黙っておいて、あの男の弱みのひとつやふたつ握ってやろうか。
…………なんて言うのは冗談。
早いうちに壁が薄いことを伝えて、静かにしてもらおう。
それがお互いのためだ。
しかし、再び立ち上がった私を止めたのはまたしても九条渚の言葉だった。
「これから穂波先輩のパジャマ姿とか見れたりすんの?」
…………ん?
パ、パジャマ姿がなんだって?
そ、そんなもの見てどうするのよ。
あっ!あの男のことだからダサいとか言ってからかうつもり?