生意気な後輩はどうやら私のことが好きらしい
本当はもっと上手に作れる。
卵焼きは私の一番の得意料理だ。
今日は想定外のことがあったから少し動揺しただけで。
本来の力は出し切れていない。
「文句あるなら別に食べなくていいから」
そう言いながら、卵焼きの入ったお皿に手を伸ばす。
すると、隣からスッと伸びてきた手は私よりも先にお皿を手に取った。
「食べないなんて言ってないだろ」
その言葉のあと、形の崩れた卵焼きを口へと運ぶ九条渚。
わ、悪いのは見た目だけで、味は大丈夫なはず。
「………………」
いや、何とか言いなさいよ。
決して、美味いも不味いも言わない九条渚。
少食のお母さんは一足先に食事を終え、日向はハンバーグや唐揚げに夢中だ。
だけど、豪華な料理が並ぶ中、一番始めに空になったのは意外にも卵焼きのお皿だった。