生意気な後輩はどうやら私のことが好きらしい


「………………ぎさっ」

「何?聞こえない」

「…………渚!これでいいでしょ。呼んだんだから同居のことは黙っててよね」

「はいはい」

九条渚、改め渚はそう言うと大きなあくびをしながら、階段を下りていった。

……なんだか普通に会話してしまった。

でも、同居中ずっと避ける訳にはいかないし、日向の前では喧嘩もできない。

仕方ない。昔みたいに接するか。

私の心が強くあれば大丈夫。

2週間の辛抱だ。

って、呑気にアイツの後ろ姿を見送ってる場合じゃなかった。

私も急いで支度しないと。


渚が出ていったあと、日向とお母さんは保育園へと向かい私は1人になった。


顔を洗い、制服に着替えて髪をセットする。

そして、毎朝お母さんが作ってくれるお弁当をキッチンへ取りに行った。

お弁当はいつも3つ。

お父さんと日向、それから私の分。

手に取るのはいつも私が最後で、そこにあるのは見慣れたランチクロスに包まれたお弁当箱。

だけど、今日はなぜか2つ。

……何だか嫌な予感がする。

恐る恐るそのお弁当の元へ近づくと、一緒に小さなメモが置いてあった。


『渚くんへ

 お弁当良かったら持っていってね。

              静香より』


それは、渚より先にうちを出る予定だったお母さんが書いたものだろう。

「あいつ……絶対見てないでしょこれ」


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