生意気な後輩はどうやら私のことが好きらしい
見つけたけど、どうやって声かけよう。
急に私が話しかけたら皆、不思議に思うよね。
何か策はないものか……必死に頭を働かせていると、昔同じようなことがあったのを思い出した。
一か八かこれでいってみよう……!
「く、九条くん!」
絞り出した声は思ったよりも小さくて。
けれど、渚の耳には届いたようで足を止めた。
渚が振り返ると、周りにいた女の子達も一斉に振り返る。
…………圧っ!
相変わらず渚の周りにいるのは可愛い子ばかり。
「誰?」
「知らない」
次の言葉を発さない私を見て周りの女の子達がざわつき出す。
は、早く何か言わないと。
「あ、あの。バスケ部顧問の先生が呼んでたよ」
古典的な技。
けれど、学校において教師からの呼び出しという言葉にはそれなりの効力がある。
「あー、俺行ってくるわ」
「えー。あとでいいじゃん」
渚の一番近くにいた女の子が渚の腕を掴み、引き止めようとする。
だが、渚はその子に視線を移すことなくこちらへ歩いてきた。
呼び出しは成功したものの、ここは人目が多すぎる。
どこか人のいない場所で渡そう。
「と、とりあえずついてきて」
目の前まで来た渚に小声でそう伝えると、特に反論もせず黙って後をついてくる。
そのまま無言で歩き続けた私達は、隣の校舎へと行き着いた。