生意気な後輩はどうやら私のことが好きらしい
「ここまで来たら大丈夫かな……」
「俺、初めてこっちの校舎来た」
「昔、特進科が使ってた校舎だって。今は使われてないからほとんど人が来ないの」
それでも、一応周りを警戒しながら話を続ける。
「顧問の先生が呼んでるってのはう「嘘だろ。前も同じ手使ってたから覚えてる」
私の言葉に被せるようにして話し始める渚。
……まさか、渚も覚えてたとは。って、私は昔話をしに来た訳じゃなくて。
「これ渡すために呼び出したの。お母さんが作ったお弁当。渚の分も用意してたみたい」
ひと目見てお弁当だとわからないように、紙袋の中に入れて持って来た。
それを渚へと手渡す。
「あとで静香さんにお礼言わないと」
よし、これにて私のミッションは終了。
誰かに見られる前に自分の教室へと戻ろう。
「じゃあ、私は先に戻るね」
「どうせなら一緒に食う?あっ、そうだ先輩、連絡先教えて。昨日聞くの忘れてた。一緒に住んでるんだから知ってた方が便利だろ」
「た、食べないよ。……連絡先は一応知っておいた方がいいね」
今後、何が起こるかわからないし。
もう今日のようなことはこりごりだ。
私がスマホのQRコードを提示すると、渚は無言でそれを読み取り、先に教室へと戻って行った。