生意気な後輩はどうやら私のことが好きらしい
私が九条渚の存在を初めて知ったのは中学2年になってすぐのこと。
『顔の良い新入生がいる』なんて、始業式早々クラスの女の子達が騒ぎ出したからだ。
私も一度だけ友達と見に行ったことがある。
第一印象は少女漫画から出てきたかのようなルックス。
遠目から見ても彼一人別格のオーラを放っているのは明らかだった。
だけど、当時先輩ブームだった私が彼に興味を持つことはなかった。
それから、校内で度々彼のことを目にすることになる。
女の子の中心にはいつも彼がいる。
見た目だけじゃなくて、本当にあの場だけが少女漫画の世界のようだ。
「まぁ、でも一生関わらないタイプだな」
「穂波ちゃん?授業遅れるよ」
「今、行くー」
言葉どおり、私が九条渚と接点を持つことはなかった。
あの日までは───、
「桃沢さん、本当に1人で大丈夫?」
「大丈夫です。晴れの日は特に暇なんで」
週に3回、お昼休みの時間に開放される図書室。
2、3年の図書委員代表が担当の曜日を決め、本の貸し出しを行う。
私は水曜日担当。