生意気な後輩はどうやら私のことが好きらしい
本来なら同じクラスの男子がもう1人いるのだが、近頃あまり学校に来なくなった。
だから、最近は私1人で業務をこなす。
とは言っても、ほとんどカウンターに座っているだけ。
それに本の貸し出しといっても、お昼休みに数十分開いているだけの図書室に来る人はほとんどいない。
今日もいつもと同じ人が1人だけ。
特にすることもなくて、私はお気に入りの小説を読み始めた。
それは最近連載がスタートした少女漫画の原作。
本当なら漫画を読みたいけど、学校への持ち込みは禁止されている。
「それにしても、今日は本当に暇だな」
誰もいないせいか、いつもより独り言も多くなる。
そんな静寂の中、ガラガラッと勢いよくドアが開いたかと思えば、1人の男の子が靴片手に入り込んできた。
そして、一言も発することなくズカズカとカウンター内に入ってくると、その場でしゃがみ込む。
その行動に私が何も言えなかったのは、彼があの九条渚だったからだ。
私がどうしていいか迷っていると、彼はしーっと人差し指を口元にあてた。
黙ってろってこと……かな。
でも、誰に?
今ここにいるのは私と彼の2人だけ。
そう不思議に思っていると、今度はさっきよりも乱暴にドアが開かれた。