生意気な後輩はどうやら私のことが好きらしい

「てか人いなくね?」

「水曜日はいつもこんな感じ」

「へー」

「あ、もうこんな時間。戸締まりしないと」

お昼休み終了のチャイムが鳴る5分前に戸締まりをして、鍵を職員室へと返す。

ここまでが図書委員の仕事だ。

渚はなぜか私が戸締まりする間、その様子を隣で見ていた。


そして別れ際、

「あ、穂波先輩さっきは黙っててくれてありがとう」

なんて笑顔を見せるものだから、私はうっかり心を許してしまったのだ。


それからというものの、渚は度々図書室に姿を見せるようになった。


「今日も匿って」

「穂波先輩、またいつもの小説読んでるの?」

「昨日、練習試合終わってからも練習でさ〜。まじで疲れた」

他愛もない会話をする日々。

それは夏休みが終わってから2学期になっても続き、その頃には私も渚と呼ぶことになんの躊躇もなくなっていた。


さすがに3年の教室前を通った渚が、廊下側に座っていた私のお弁当から
「卵焼きもーらい」「え?卵焼きは先輩の手作り?料理できるとか意外」と声をかけてきたときは驚いたけど。


< 31 / 66 >

この作品をシェア

pagetop