生意気な後輩はどうやら私のことが好きらしい


顔を合わせると図書室以外でも話をする。いつの間にかそんな関係になっていた。

そして、その頃にははっきりと自分の気持ちを自覚していた。

生意気で態度がでかいくせに、時々『それ、図書委員の仕事?手伝おうか』とさり気ない優しさをみせてくる。

そんな渚のことが好きなのだと。

だけど、人気者の渚を目の前にするとどうしても自信を失い、素直になれない私。

到底、告白なんてできなかった。


それから数ヶ月───。

何も伝えられないまま、卒業の日を迎えた。


学年一人気があった男子や偉大なる恩師を差し置いて、輪の中の中心にいたのは渚。

その多くが写真や、連絡先、第2ボタンを求めている。

私も……想いを伝える勇気はないけど、最後に一言話したい。

けれど、渚の周りから人が去る様子はない。

あの人混みの中、声をかけるなんて私には無理だし諦めようかな……。

どうせ、渚にとって私はただ大勢いた先輩の中の一人だろうし。

最後まで素直になれなかった私は、校門へと歩き出す。

そのとき、


「穂波先輩!」と人波をかき分けて、渚の方からこちらに近づいてきたのだった。



< 32 / 66 >

この作品をシェア

pagetop