生意気な後輩はどうやら私のことが好きらしい
顔を合わせると図書室以外でも話をする。いつの間にかそんな関係になっていた。
そして、その頃にははっきりと自分の気持ちを自覚していた。
生意気で態度がでかいくせに、時々『それ、図書委員の仕事?手伝おうか』とさり気ない優しさをみせてくる。
そんな渚のことが好きなのだと。
だけど、人気者の渚を目の前にするとどうしても自信を失い、素直になれない私。
到底、告白なんてできなかった。
それから数ヶ月───。
何も伝えられないまま、卒業の日を迎えた。
学年一人気があった男子や偉大なる恩師を差し置いて、輪の中の中心にいたのは渚。
その多くが写真や、連絡先、第2ボタンを求めている。
私も……想いを伝える勇気はないけど、最後に一言話したい。
けれど、渚の周りから人が去る様子はない。
あの人混みの中、声をかけるなんて私には無理だし諦めようかな……。
どうせ、渚にとって私はただ大勢いた先輩の中の一人だろうし。
最後まで素直になれなかった私は、校門へと歩き出す。
そのとき、
「穂波先輩!」と人波をかき分けて、渚の方からこちらに近づいてきたのだった。