生意気な後輩はどうやら私のことが好きらしい


アイスを食べ終えたあとは2人で一緒に歯を磨き、日向の口の中をチェックした。

リビングに向かう途中、今度は黒いTシャツグレーの短パン姿の渚と廊下で鉢合わせる。

「あ、渚くん。髪濡れてるよ」

本当だ。渚の髪からはポツポツと水滴が落ちている。

「ちょっと、なんで乾かさないの」

「ドライヤーなくて」

「……あ、そういえばリビングに置いたままだった。取ってくる」

リビングにドライヤーを取りに行こうとすると、なぜか日向が私の服の裾を掴んで静止する。


「なに、日向?」

「渚くんの髪、穂波ちゃんが乾かしてあげるの?」

「「えっ?」」

なんでそうなる?という不思議な質問に私と渚の声が重なる。

「だって、日向がビチョビチョで出てきたらいつも穂波ちゃんが乾かしてくれるから」

「そ、それは日向だから」

「渚くんの髪は乾かしてあげないの?」


純粋無垢な子供の疑問。

真っ直ぐ向けられる曇りなき眼。

「な、渚くんはね大人だから自分で、」

「じゃー今日は穂波先輩に乾かしてもらおうかな」

「…………へ?あ、ちょっと待って」

渚は私の意見も聞かず、リビングへと歩いて行く。

その背中を追う日向。

ま、まずい、非常にまずい。


何だかおかしなことになった。

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