生意気な後輩はどうやら私のことが好きらしい
誰か怪我でもしたのかな?
気になって声がした方へ近づくと、男の子が体操服で腕から出た血をふこうとしている真っ只中だった。
「ちょ、汚れるよ」
その光景に思わず声をかけてしまった私。
突然、知らない人間に話しかけられた男の子はキョトンとした顔をしている。
「とりあえず、このティッシュ使って」
見た限り出血量はそれほど多くない。
私はポケットに入っていたティッシュを数枚取り出すと、目の前の彼へと手渡した。
「あざっす。下駄箱にもたれてたら、ちっさい木?みたいなのが飛び出してて」
こちらがどうしたの?と尋ねる前に話し出す彼。
「絆創膏持ってる?」
「ないっす。てか絆創膏って持ち歩くもんなんすか」
「ひ、人それぞれ?……良かったら貼ろうか?」
彼は右肘から血を流している。
自分で貼るには少々難しい位置。
「いいんすか?まじ助かります」
人通りの少ない廊下の隅で、初対面の相手に絆創膏を貼る。あまりないシチュエーションだろう。
彼も同じように思ったようで、「あんまないっすよね。こんなこと」と言いながら笑った。