生意気な後輩はどうやら私のことが好きらしい
というか、今日会ってからずっと笑ってる気がする。
「これで大丈夫だと思うけど、心配なら保健室行ってね。それからこれ予備の絆創膏。良かったら使って」
「うわー!ありがとうございます!先輩まじ天使ですね」
絆創膏を渡しただけで大げさな。
だけど、目の前の彼があまりにも嬉しそうに笑うものだから、私もつられて笑顔になった。
「あ、そうだ!名前教えて下さい。お礼するんで。俺は和泉っていいます」
「えっと、桃沢です。お礼は大丈夫だから。気にしないで」
「いやいや!俺あのままだったら体操服汚して母ちゃんにブチギレられるとこだったんすよ」
じゃあ、なぜ体操服でふこうとしたの。という言葉はあえて呑み込んだ。
「本当にいいから。気にしないで」
そう言って立ち去ろうとしたとき、「穂波先輩?」と背後から声をかけられた。
振り向くと朝練を終えたばかりであろう渚がいて、私達のいる場所へと近づいてくる。
その姿に「「渚」」と思わず名前を呼ぶ私と和泉くん。