生意気な後輩はどうやら私のことが好きらしい
「渚くんが帰るってわかって泣いてるの」
「あっ……」
日向は渚にべったりだったから、出ていくときこうなることは予想していた。
けれど、今日が別れの日じゃないんだから。そう言おうとしたら、続けて話すお母さん。
「また遊びに来てくれるわよ。ほら、放してあげないと渚くんが帰れないでしょ」
「……そうだよ。何も今日帰るわけじゃないんだし、ね?」
「あら、渚くん今日帰るのよ?穂波、聞いてなかったの」
その言葉に今度は私の方が落ち着きをなくす。
「えっ……?」
渚が今日、出ていくなんて初耳だ。
「連休中は部活行くだけだし、飯も友達と食うからどうにかなるかなって」
渚はその言葉どおり本当に出ていくようで、よく見るとソファの横に荷物がまとめられていた。
日向と違って、私は初めから期間限定の同居だと理解していた。
別れの日がたった数日早まっただけ。
それなのに、自分がこんなにも動揺するなんて思わなかった。