生意気な後輩はどうやら私のことが好きらしい
エピローグ
これは私と先生しか知らない、とある冬の日の話。
「桃沢ならもっと上狙えたのにな」
合格報告に行ったら、おめでとうの言葉と同時に先生が嘆いた。
「家からの距離が近いのは魅力的だけど、他はバスケ部が強いことくらいだろ?」
私が志望校を選んだ理由は家からの距離が近いから。そういうことになっていた。
「それ、私にとっては十分魅力的な話です」
「桃沢、バスケに興味あったっけ?」
「……いえ、全く」
「もしかして、バスケ部に気になるやつでもいるのか?」
「それは、黙秘します」
「お、おう。先生はそれもいいと思うぞ。青春だな!」
私には大した特技や夢はない。
可愛い制服、緩い校則。
それにも興味がないし、必要なら電車にも乗る。
ただ、願わくばもう一度、彼と一緒に学校生活を過ごしたい。
そんな想いで選んだ高校。
再会は春、不思議な縁とともに───。