深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
今さら言い訳しても、どうにもならないと思うのに、どうしてそんなにも話したいのだろう。

古谷さんとのことは、聞きたくないのにな。

重い足取りで、黒いエコバックをさげる恭也の横まで行く。

「手短に話してくれる?」
「んー、難しいけど、頑張るよ」

私が頷くと、まず「落ち込んでいたんだ」と言った。

「さやかがいなくなって、寂しかった。元気がなかったから、父親が彼女と喧嘩でもしたのかって聞いてきた。それで、別れたと言ったんだ。誰のせいで別れたと思うんだと、ちょっと憎しみを込めた感じで言ったんだけど、そうは伝わってなくてさ」

一瞬目を伏せた恭也は、空いている手をジーンズのポケットに入れた。

「古谷さんとのことを考えてくれるようになったんだなって、喜ばれた。違うと言ったら、別れたことを悲しんでいないで、先のことを考えた方がいいと言われて、古谷さんとの縁談を勝手に進められたんだ」
「勝手に?」
「そう。俺、明日は熱が出る予定なんだよ」
「えっ?」
「だから、食事会には欠席する」

恭也はニヤリと、悪巧みしているふうな顔で笑った。
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